ブックタイトル鳴門塩田絵巻(サンプルページ)

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概要

鳴門塩田絵巻(サンプルページ)

70(9頁に大きな原図掲載)沼ぬ井い台だい(単に「台」という。沼井台は鳴門地方の方言で、一般には「沼ぬ井い」というので、以下、「沼ぬ井い」に統一する。)沼ぬ井いをつくるには、木製の台型を使用する。夫婦台一組( 沼ぬ井い二台)をつくる仕事が浜子の日役であったので、たいてい受け取り仕事でおこなわれた。台型を一定の場所に据え付けて、乾燥した粘土を少し堅めに練って足で粘土を踏み付けて下部をつくり、中央から上部は粘土の「サメ」(四寸角ほどの粘土の塊)を打って盛り上げた後、踏ふん鋤ずきを使って余分な粘土を切り取り仕上げる。台の四隅は、割れないようにつばての「藁ごみ」を入れることと、受壺前は三味線の胴のように丸めて美しく丈夫に仕上げることが要領であった。沼ぬ井いは、長さ一一尺・幅五尺七寸四分・高さ一尺七寸、内部の長さ・幅ともに四尺五寸九分、粘土の厚さは上部六寸、基底は八寸である。できた沼ぬ井いは、四、五日の間は毎日二、三回打ち固めるも乾燥すると、何か所も割れ目ができる。この割れ目には、縄を打ち込んでその上を「つぼごみ」という粘土で塗り固めて使用する。耐用年数は六か年であった。沼ぬ井いの下部に根ね太だを敷き、その上に巣竹という細い竹を一面に並べ、さらに台だい敷しきを敷き、その上に巣すごも菰を敷く。その上に持もち浜はまで塩の結晶の付いた砂を入れた後、さらに海水を入れて、海水に塩の結晶を溶かして濾ろ過かする。片台と夫婦台があり、沼ぬ井い一台(片台)の塩田面積は約三〇坪あるが、沼ぬ井いや撒さん砂しゃの置場があるため、実際の有効面積は二五坪程度である。夏期には一坪当たり一斗四升の砂を撒いて、塩の結晶が付着した砂(鹹かん砂しゃ)を沼ぬ井いに集めると、三石五斗の砂が入る。それから浜溝の海水を入れて、砂に付いた塩の結晶を濾ろ過かして鹹かん水すいを採取する。鹹かん水すいを煮つめて塩をつくると、三〇㎏俵が一俵できた。その結果、一戸前二町歩( 沼ぬ井い二〇〇台)の塩田で替かえ持もちの場合、一日に一〇〇台の持もち浜はまをおこなうことになるので、一〇〇俵の塩ができた。塩田は、夏期六か月間に鹹かん水すい六割六分六厘を生産し、冬期の六か月間はわずかに鹹かん水すい三割三分余りしか生産できない。この粘土製の沼ぬ井い(粘土台)も大正十年(一九二一)には、板野郡瀬戸村明あきのかみ神(現在の鳴門市瀬戸